2011年4月10日日曜日
読書に適した喫茶店
伊勢に今月で閉店する喫茶店がある。
25年営業を続けてきたそうだ。
私がこの店を知ったのは、3年ぐらい前だとおもう。
友達に「いい喫茶店がある」というので連れてこられたのだ。
壁にはステンドグラスがはめてあって、
こぶりの椅子と机があって、
エプロンをした感じのいいマスターがいる。
コーヒーはエレガントで華奢な形をした、
花柄のコーヒーカップに入っている。
音楽はクラシック。
「これぞ喫茶店!」という喫茶店で、私は気に入って、
時々ひとりで立ち寄っていた。
本を読んだり、チョコレートパフェを食べたりしに。
この店を教えてくれた友達に用があるときは、
必ずここの喫茶店を指定した。
友達と2人でぼそぼそとの得体の知れないトーク繰り広げても、
すっぽりと収まってくれるような、そんな懐の深い喫茶店だった。
他にも潰れていく喫茶店はある。
名古屋からやってきた大型のコーヒーチェーンであるとか、
若者が好みそうな、店主の趣味を無言で押し付けてくる、
居心地の悪いカフェであったり、
そういうお店はたくさんある。
しかし、その中でも何十年とできるお店は少ないだろうと思う。
最近、家の近所にいい案配の喫茶店を発見した。
といっても40年以上そこで喫茶店を営んでいるお店なのだけど、
こないだひょんなことがきっかけで、初めて足を踏み入れた。
とてもいいお店だった。
程よく使い古された椅子や机、茶色くなった壁。
客層もほとんど年配の方たちである。もしくはサラリーマン。
ひとりでふらっとやってきて新聞を広げていたり、
団体でおばさんたちがおしゃべりをしていたり。
そしてほとんどの人がお店の人と顔なじみのようだった。
窓際の席は日当りもいい。
モーニングもやっているし、ランチの種類も多い。
品数がたくさんある。
近頃はおじいさんや、おばあさんのお客さんに混じって、
本を読みにいくことが多くなった。
そこに行くと、ふわふわしていた気持ちが、
すっぽりと収まるのである。
家ではないどこかで本を読むということ。
つまり暮らしから少し逸脱した世界が近所にあるというのは、
ほんとうにありがたいことである。
読書にはおいしいコーヒーが必須だと近頃は特におもうわけで。
大きな声でなにかを主張するわけではなく、
ただお客さんの居心地の良さを提供しようとする気遣いが、
伝わってくる。
そしてそこに自然と人が集まってくる。
思想や年代や趣味を分け隔てる事なく。
それは人としてとても品のよいことのように思う。
長く細くひっそりと店を続けている店には、
やはりそれなりに失われてはいけない、
多くの人々の共有されるべき価値があるのだ。
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